無人のレンタルドレス店舗を経営する中、セルフエステのサービスも同様に無人のしくみで提供できるのではないかと考え、昨今急激に店舗が増えているセルフエステ業界への参入を検討したものの、法的に気になる点があったので、調べたことをまとめてみました。
医師法第17条
厚生労働省の「「医行為」について」というページには、以下のとおり記載があります。
「医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある行為」は、セルフエステないしは有人エステサロンでは施術できないという訳です。
したがってハイフについても、上記の解釈をどのように解釈するかによって、違法か合法かを判断することになります。
私自身は、セルフエステないしは有人エステサロンにおいて、ハイフは違法と考え、参入は止めましたが、備忘録的に情報をまとめておこうと思います。
有人エステとセルフエステ
通常の有人エステと比べると、セルフエステの方が、自分で施術する分、違法になる可能性が高いと思われるかもしれませんが、エステティシャンは特別な資格等がある訳ではないので、法的には両者に違いはありません。
エステティシャンに特別な資格等が必要にならない限り、エステティシャンと一般の人を区別する可能性は今後も低いと言えるでしょう。
したがって、セルフであるかどうかは少なくとも法的には論点ではなく、あくまで医行為であるかどうかを考えていくことにします。
タトゥー施術は医師免許不要
セルフエステに関連する領域としてタトゥーは、2020年9月17日、日本経済新聞の「タトゥー施術は医師免許不要 最高裁が初判断」によると、
とされました。
踏み込んだ発言があり、ハイフ機器メーカーと打ち合わせをしている際も、タトゥーの事例を出され、美容ハイフも今は認められていないが、「タトゥー同様に今後認められると当社は考えている」といった旨の説明を受けました。
脱毛に対しても一定の線引が存在
厚生労働省は2001年、「医師免許を有しない者による脱毛行為等の取扱いについて」において、以下のとおり記載しています。
「光線を毛根部分に照射し、毛乳頭、皮脂腺開口部等を破壊する行為」をエステで行うことは明確に違法とされることによって、破壊するか否かという線引が設けられ、広告においても完全脱毛は謳えない等の制限が生じました。
先述のハイフ機器メーカーからは、脱毛についても言及され、「脱毛同様に今後認められると当社は考えている」といった旨の説明を受けました。
消費者庁はハイフを調査に
2021年7月30日、朝日新聞デジタルの「エステの超音波照射器「HIFU」 使用実態を調査へ」には、以下のとおり記載があります。
ハイフについては、未承認の医療機器を販売した経営者が2015年に逮捕されたり、2017年には国民生活センターが「エステサロン等でのHIFU機器による施術でトラブル発生!-熱傷や神経損傷を生じた事例も-」として注意喚起を行い、2019年には一般社団法人エステティック振興協議会等が「「ハイフ施術(含むセルフハイフ)」禁止についてのご案内」の中で、ハイフ施術禁止の徹底が呼びかけられていました。
一方でハイフ市場は急拡大
関係各所からの懸念の表明はありながらも、ハイフ市場は急拡大を続けています。
Googleトレンドで過去5年間の検索ボリュームを見てみると、2019年頃に「ハイパーナイフ」や「キャビテーション」を抜き、大きく引き離しています。
ホットペッパービューティーのエステ部門における2021年夏(詳細の時期は不明)年代別検索キーワードランキングにおいても、20-50代の各年代において、「ハイフ」が1位となっています。
- 10代:眉毛 → 脱毛 → ハイフ
- 20代:ハイフ → 脱毛 → 眉毛
- 30代:ハイフ → 脱毛 → 小顔
- 40代:ハイフ → 脱毛 → ブラジリアンワックス
- 50代:ハイフ → 脱毛 → ヘッドスパ
ハイフに対する考え
Empty Dressyのお客様は、結婚式や卒業式の謝恩会、成人式の二次会等、ハレノヒに向けてご利用いただくことがほとんどです。
その際に、短期的に効果が分かりやすいハイフを無人かつセルフで低価格で提供することは、ビジネス的には大いに成り立つと今でもなお考えています。
一方で、法的もしくは健康的なリスクはあまりにも大きく、多くの業者関係者や潜在的ユーザーから話しを聞いた上で参入を見送ることとしました。
ハイフは、タトゥーと異なり、超音波を体内の特定部位に集中させることで加熱し、熱変性を生じさせること自体に目的があり、逆にそれらが生じない場合、効果を見込むことができません。
またハイフは、脱毛と異なり、毛乳頭を破壊するか否かといった線引を設けて、医療用か否かを判断することも、施術の特性上難しいと考えます。
以上を考慮すると、ハイフは医行為としか思えず、医療機関以外が参入するには、法的もしくは健康的なリスクが大きいと思います。
健康リスクを抑えるために考えられること
医療機器の製造販売には、厚生労働省が所管する所定のプロセスに則って認証を受ける必要がありますが、医療機器ではない場合は、基本的にそのような認証のプロセスがありません。
したがって、Webサイト等に以下に機器に関する情報が記載されているかが判断材料の一つになります。
チェーン展開がされているわたしのハイフや、情報公開がしっかりとされているフォーカスネオのような機器は、皮膚と機器の間を空けると出力がなくなるもしくは弱まるというようなしくみがあり、安全性に一定の配慮があります。
一方で、数万円で販売されているVmax等にはそのようなものがなく、現在確認されている健康被害の多くもそういった粗悪で安価な機械によるものが多いと思われます。
ただ、どんなに素晴らしい機器であっても、誤って眼球を傷つけてしまったり、喉仏等本来避けるべきところに強い出力を当ててしまう等の強いリスクから完全に逃れることはできません。
とはいえ、医療ハイフは、機器の価格や医師・看護師の人件費等を考慮しても、必要以上に高過ぎると思います。
旺盛な需要があることは間違いないので、より安価で、より効果的な施術が受けられるような環境整備が行われることを、一参入検討者として願っております。